妹と人生を入れ替えました~皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです~
犯人はやっぱり、皇后一派だった。
あの後、すぐに実行犯を捕えた白龍が、口を割らせたのだ。
けれど、皇后が頑なに自分の関与を認めないため、彼女を罪に問うことは難しいらしい。
とはいえ、帝も思う所があったらしく、皇后の処遇は帝預かりとなっている。後宮から離宮へと移され、他人と関わることを一切禁じられているらしい。
譲位が済めば、後宮の内部は一掃される。彼女の手の者もやがて居なくなるだろう。
そうして傷口が塞がったある日、わたしは後宮を訪れた。
「姉さまが無事で、本当に良かった」
顔を見るなり、華凛は涙を流して喜んでくれた。後宮内に事件の詳細を知る者はいないし、きっと不安だったのだろう。わたしは華凛をそっと抱き締めた。
「ごめん。華凛には色々と苦労を掛けたね」
思えば華凛は、わたしたちに振り回された一番の被害者だ。人生の大事な時期を、わたしの我儘で台無しにしてしまったのではないか――――そう尋ねたら、華凛はキョトンと目を丸くして、それから花のように笑った。
「いいえ、わたくしはとても楽しかったです。姉さまのおかげで、本来ならば経験できなかった後宮生活を堪能できましたし、白龍とも出会えましたし」
「白龍?」
何故ここで白龍が出てくるのだろう。
そう思っていたら、華凛はクスクスと楽し気に笑った。
「わたくし、白龍のあの宝石みたいな瞳が好きなのです。あの顔、鍛え上げた肉体も、素敵ですもの。絶対、絶対手に入れて見せますわ」
(へぇーー、あの華凛がねぇ)
それはあまりにも意外なことだった。
華凛は立っているだけで男達を惹きつけるタイプだ。白龍のように、自分に靡かない男は珍しいのかもしれない。
(案外合うかもしれないな、あの二人)
白龍と華凛が二人でいるところを見たことは無い。けれど、二人の相性は悪くないように思う。感情の起伏が少ない白龍を華凛が上手く支えて、仲の良い夫婦になれるんじゃないだろうか。そう思うと、なんだか胸が温かくなる。
「華凛……改めて、今までありがとうね」
「ええ。憂炎の気持ちが届いて良かったです」
互いを抱き締め合いながら、感傷に浸る。この数か月間の記憶が胸を過り、目頭がグッと熱くなった。
「ふふっ……実は、憂炎が余りにも気の毒で、わたくし彼を誘惑してみたのです。けれど、憂炎は頑なでした。姉さまじゃなきゃ嫌だって…………一度も頷いてはくださいませんでしたの。姉さま、愛されてますね」
「華凛……」
自己申告してくるあたりが華凛らしい。まぁ、華凛ならやるだろうなぁとは思っていたけど。
(そっか……憂炎の奴)
意志に反し、頬が紅く染まっていく。心臓がドキドキして、身体が熱くて堪らなかった。
「さぁ、姉さま。憂炎がお待ちかねですわ」
「…………うん」
華凛がわたしの背中をそっと押す。
妃として、初めて憂炎を迎え入れる。
こうしてわたしたちは、互いの人生を元に戻したのだった。
めでたし、めでたし――――。
あの後、すぐに実行犯を捕えた白龍が、口を割らせたのだ。
けれど、皇后が頑なに自分の関与を認めないため、彼女を罪に問うことは難しいらしい。
とはいえ、帝も思う所があったらしく、皇后の処遇は帝預かりとなっている。後宮から離宮へと移され、他人と関わることを一切禁じられているらしい。
譲位が済めば、後宮の内部は一掃される。彼女の手の者もやがて居なくなるだろう。
そうして傷口が塞がったある日、わたしは後宮を訪れた。
「姉さまが無事で、本当に良かった」
顔を見るなり、華凛は涙を流して喜んでくれた。後宮内に事件の詳細を知る者はいないし、きっと不安だったのだろう。わたしは華凛をそっと抱き締めた。
「ごめん。華凛には色々と苦労を掛けたね」
思えば華凛は、わたしたちに振り回された一番の被害者だ。人生の大事な時期を、わたしの我儘で台無しにしてしまったのではないか――――そう尋ねたら、華凛はキョトンと目を丸くして、それから花のように笑った。
「いいえ、わたくしはとても楽しかったです。姉さまのおかげで、本来ならば経験できなかった後宮生活を堪能できましたし、白龍とも出会えましたし」
「白龍?」
何故ここで白龍が出てくるのだろう。
そう思っていたら、華凛はクスクスと楽し気に笑った。
「わたくし、白龍のあの宝石みたいな瞳が好きなのです。あの顔、鍛え上げた肉体も、素敵ですもの。絶対、絶対手に入れて見せますわ」
(へぇーー、あの華凛がねぇ)
それはあまりにも意外なことだった。
華凛は立っているだけで男達を惹きつけるタイプだ。白龍のように、自分に靡かない男は珍しいのかもしれない。
(案外合うかもしれないな、あの二人)
白龍と華凛が二人でいるところを見たことは無い。けれど、二人の相性は悪くないように思う。感情の起伏が少ない白龍を華凛が上手く支えて、仲の良い夫婦になれるんじゃないだろうか。そう思うと、なんだか胸が温かくなる。
「華凛……改めて、今までありがとうね」
「ええ。憂炎の気持ちが届いて良かったです」
互いを抱き締め合いながら、感傷に浸る。この数か月間の記憶が胸を過り、目頭がグッと熱くなった。
「ふふっ……実は、憂炎が余りにも気の毒で、わたくし彼を誘惑してみたのです。けれど、憂炎は頑なでした。姉さまじゃなきゃ嫌だって…………一度も頷いてはくださいませんでしたの。姉さま、愛されてますね」
「華凛……」
自己申告してくるあたりが華凛らしい。まぁ、華凛ならやるだろうなぁとは思っていたけど。
(そっか……憂炎の奴)
意志に反し、頬が紅く染まっていく。心臓がドキドキして、身体が熱くて堪らなかった。
「さぁ、姉さま。憂炎がお待ちかねですわ」
「…………うん」
華凛がわたしの背中をそっと押す。
妃として、初めて憂炎を迎え入れる。
こうしてわたしたちは、互いの人生を元に戻したのだった。
めでたし、めでたし――――。