妹と人生を入れ替えました~皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです~
3.凛風の出仕
華凛としてのわたしの平穏な日々は、ある日唐突に終わりを迎えた。
「一体どうなさいましたの?」
宮廷から帰宅した父様に、わたしは呼び出された。改まった雰囲気。何となくだけど嫌な予感が胸を過る。『憂炎から入内の打診が来ていると告げられた時』とよく似た状況だった。
「華凛――――おまえに東宮様の補佐をするよう、打診が来ている」
「憂炎の補佐⁉」
「こら! 東宮さま、だろう?」
父様に指摘され、わたしは思わず唇を押さえた。
(驚きのあまり、ついつい素が出てしまった。危ない危ない)
華凛らしくない反応を返してしまったものの、幸い父様はそこまで気にしていないらしい。ホッと胸を撫でおろしつつ、わたしは父様を見つめた。
「父様、一体どういうことですの?」
「うむ……東宮さまは初めての公務に戸惑っていらっしゃるらしい。優秀な方ではあるが、宮廷から離れて家臣の元で育てられたのだ。さもありなん、というところだが」
父様はしたり顔でそんなことを口にする。だけど、わたしが聞きたいのはそういうことじゃない。
『どうして憂炎が『華凛』を補佐として指名してきたのか』
その一点だけだ。
内心イライラしつつも、わたしは華凛らしい微笑みを浮かべて、小さく首を傾げた。
「ですが、宮廷にはたくさんの優秀な人材がおりますでしょう? 補佐が必要な理由は分かりますが、わざわざ未経験者のわたくしを指名しなくとも良いのではありませんか?」
「そこはそれ、気心の知れた人間が良いらしい。
東宮さまは生まれも育ちも特殊でいらっしゃる。皇后さまが何を仕掛けてくるか分からないし、家臣からの信頼もまだ得られていない。だから、しばらくの間、側近は身内で固めたいという御意向なのだろう」
父様はうんうん頷きながら、そんなことを言った。
「一体どうなさいましたの?」
宮廷から帰宅した父様に、わたしは呼び出された。改まった雰囲気。何となくだけど嫌な予感が胸を過る。『憂炎から入内の打診が来ていると告げられた時』とよく似た状況だった。
「華凛――――おまえに東宮様の補佐をするよう、打診が来ている」
「憂炎の補佐⁉」
「こら! 東宮さま、だろう?」
父様に指摘され、わたしは思わず唇を押さえた。
(驚きのあまり、ついつい素が出てしまった。危ない危ない)
華凛らしくない反応を返してしまったものの、幸い父様はそこまで気にしていないらしい。ホッと胸を撫でおろしつつ、わたしは父様を見つめた。
「父様、一体どういうことですの?」
「うむ……東宮さまは初めての公務に戸惑っていらっしゃるらしい。優秀な方ではあるが、宮廷から離れて家臣の元で育てられたのだ。さもありなん、というところだが」
父様はしたり顔でそんなことを口にする。だけど、わたしが聞きたいのはそういうことじゃない。
『どうして憂炎が『華凛』を補佐として指名してきたのか』
その一点だけだ。
内心イライラしつつも、わたしは華凛らしい微笑みを浮かべて、小さく首を傾げた。
「ですが、宮廷にはたくさんの優秀な人材がおりますでしょう? 補佐が必要な理由は分かりますが、わざわざ未経験者のわたくしを指名しなくとも良いのではありませんか?」
「そこはそれ、気心の知れた人間が良いらしい。
東宮さまは生まれも育ちも特殊でいらっしゃる。皇后さまが何を仕掛けてくるか分からないし、家臣からの信頼もまだ得られていない。だから、しばらくの間、側近は身内で固めたいという御意向なのだろう」
父様はうんうん頷きながら、そんなことを言った。