夏ラムネ
キラキラ製造機
side 蘭野
「なあなあ、穂高」
いつも通り、気の入らない授業をしていた教師、和音センセイは鐘が鳴った後すぐ俺を引き止めた。
友人の兄という、周りの奴よりは一歩二歩近い関係。
和音センセイは、それほど聞かれたくない話なのか、俺の耳に手を当てる。
「なに?」
「俺、知ってんだよなあ。片良瀬の好きなものと嫌いなもの」
「…は!?」
もちろん、こんなに口の軽そうな男に話すわけもなく、その弟のほうだ。
現にこうやって片良瀬の情報をペラペラ話しているのだから。
…まあ、気になるけど。
「……なに?」
聞くけど。
「果物が好きなんだってよ?嫌いなのは、炭酸」
果物、炭酸。
二つも片良瀬のことを知れて嬉しい、が半分、あと半分は昨日の出来事にあった。