夏ラムネ
「あっ、開い、た…っ?」
ドン、パリン
挙句の果てには力の入れすぎでビー玉がガラスを割った。
運の悪いような良いような、ビー玉の行く先は保健室で。
…なんて、そんなに格好悪い裏話、片良瀬には内緒にしておこう。
「こいつ片良瀬のためにビー玉抜こうとしてさあ…」
「和音!」
さっきの俺みたいに、椅子の上でくるくる回りながら話し出す暴れ放題の唇を引っ張る。
目の前の彼女は前とは違う微笑みをうかべた。
照れたように、はにかむように俺を見る顔は、閉じ込めてしまいたいほど可愛い。
保健室も、消毒液の匂いも好きではないけれど、片良瀬がいるならどんな場所でも、夏に反射するみたいにキラキラ映る。
「蘭野ありがと、嬉しい!」
「…どう、いたしまして?」
さて、次はこの保健室にどんな魔法をかけようか。