夏ラムネ
真っ白で淡白。雲とは全然違う、かたくて冷たい格好をした天井は今日もまた私を見つめていた。
でも今日は、少しだけ違って見える。
「俺、隣の席なのに片良瀬のことなんにも知らなかった」
「隣の席、はそこまで親密じゃないからね」
拗ねたように私を見る蘭野にほんの少し笑いがこぼれた。
私だって知らなかった。こんな顔もするってこと。
扇風機に顔を当てて「あー」と声を震わせているのも、夏に弱いところも。
今の蘭野は、私だけが知ってる。
「隣の席のよしみでさ、片良瀬のこと教えてよ」
恋人同士の繋がりが糸100本分だとしたら、隣の席だなんて糸1本分でしかない。
ちぎれちゃってもしょうがないのに、もっと増やそうとしてくれるのかな。
「好きな色…白かな?」
「俺も白が一番好き!気合うね」
ザア、と窓が揺れるくらいの風が吹いて、カーテンのすき間から太陽の光が入り込む。