夏ラムネ

「いいよね、この夏の太陽。ギラギラでわくわくしない?俺、夏はラムネしか飲まない」


「ラムネだけって…でも、わかる。ラムネのビー玉が綺麗で、つい買っちゃうんだよね」



夏が始まる今日、蘭野と話して“夏”が楽しみになった。



暑いだけじゃない、なにかが映る気がした。



蘭野は、なんでも好きになれそう。春でも、秋でも、もちろん冬でも。



好きじゃなくても、好きなところをすぐに見つけちゃったり。



…私も、ここから出られるかな。いつか、普通になれたら。



「保健室だと、季節は窓からしか感じられないね。…それを俺は割ってしまったと」



「ふふっ、一緒に謝ってあげるって」



午後五時の鐘が鳴った。



窓から聞こえたサッカーボールを蹴る音で、私は「そういえば」と思い出した。



「蘭野、部活は?」


「自称ハライタで抜けてきた」


「ハライタで部活抜けてビー玉投げたの?不思議なひとだね、蘭野」
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