夏ラムネ
蘭野は私にとってそういう人。
背の高い人とか、サッカーが上手な人とか、そういう印象じゃなくて、今日みたいなことばっかり私の中に残る。
残る場所が深くて深くて、簡単に消えたりしない。
取れないラムネのビー玉みたいじゃない?
「───俺たち、好きな人もおなじだったりしてね」
「…好きな、ひと?」
私が好きと、蘭野の好きが一緒?
言うまでもなく、私は彼に恋しているわけで、彼も同じだとしたら…
蘭野は蘭野が好き…?
「それは、なんと言うか…自尊心が高いみたいな…?」
「は……え?」
「蘭野なんでもできるもん、好きになるのわかる!」
「ちょ、まっ、片良瀬!」
また初めて見た表情を浮かべたことに目がいってしまって、私の口にしたことがどれだけ変だったか、蘭野が口を開くまで気付けなかった。
「自尊心って…もしかして片良瀬、俺のこと言ってる?」
「……え」
私が好きなのが蘭野だから、蘭野は蘭野を好き…
だから、蘭野に自尊心が高いって…言って…
…うん、蘭野を好きって、わかる、ね?