夏ラムネ
見たことの無い真剣な顔を向けるから、「冗談」だなんて、一ミリも思わなかった。
望んでもいない暑さが私に帰ってくる。顔も、手も、首も全部真っ赤に染まっているはず。
好き…?
嬉しいよりも先に、どうして私?って疑問がぷわんと浮かぶ。
「…私は蘭野の目に留まるような人じゃない、と思う」
「いや?俺の目の真ん中にいたの、いつも片良瀬だよ」
「……」
「ふ、疑ってるね?」
好きな人からの好意を受け取ることに戸惑っている私だけれど、蘭野は嫌な顔なんてまるでせず、微笑みをこぼした。
胸が鳴るのが五月蝿くて、それでもこの距離のままでいたい。
好きって返したら、もっとドキドキしちゃうかな。
少し視線を逸らした先に置いてあったのは一枚の紙。
“保健室使用届”と大きく書いてあるソレは、文字通り、保健室を使用する生徒が書くもの。
症状、今の状態やら、来た時間だったり。