スキナダケ
「ねぇ」

女の子は電車には乗らない。
この子の家の最寄りの駅だから。

なのに「もうちょっと一緒に居たい」って言って、女の子はホームへの入場券だけを買った。

電車に乗るのはハナなのに、ハナよりちょっと前に立って電車がホームに滑り込んでくるのを待つ女の子の、右手の人差し指を掴んだ。

「ほんとに後悔しない?」

「え?」

電車が通過します。
白線の内側にお下がりください。

駅員さんのアナウンスがそう繰り返している。

電車が通過します、と赤色に点滅する電光掲示板。
遠くから線路を鳴らす電車の音が響いてくる。

この駅に快速列車は止まらない。

相変わらず生ぬるい風が吹き抜けていく。

「後悔?」

「今ここで、殺されても。」

「…いいよ。君になら」

言い終わらないうちに、トン、って女の子の肩を押した。

彼女はにっこり笑っていた。
走馬灯みたいに、その笑顔はすぐに消えた。
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