スキナダケ

夕海をガッカリさせた。
くだらないハナの悪戯心で。

いや、悪戯っていうか、
夕海には知られたくなかった。

ハナの手は沢山の人間の血で汚れてる。
遺伝子だけで綺麗に見せかけた容姿で、人で遊んでる汚い奴だってこと。
夕海には知られたくなかった。

いつか絶対にバレるのに。
ハナと夕海の関係が完全に切れでもしない限り、隠し通せるわけないのに。

それでも辞められない。
もはや殺人はハナのアイデンティティだもん。

…アイデンティティってなんだっけ。
くだらないな。
何もかも。

涙がこぼれた。
いい子じゃないハナのこと、夕海は要らなくなっちゃったかな。

スッと首にかかる夕海の力が抜けた。
夕海だって本気で殺そうなんて思ってない。
でも急に気道がラクになって、咳き込んだ。
< 111 / 235 >

この作品をシェア

pagetop