スキナダケ
遠目から見る夕海は、あんまり変わっていないように見えた。
ハナの家と夕海の家は一時間くらい離れているし、この繁華街に居ることすら不思議なのに。
それでもハナが夕海を見間違うはずは無い。
絶対に夕海だって確信があった。
隣を歩いてる小柄の男子にはまったく見覚えが無いけれど。
夕海よりも年下に見える。
弟は居ないはず。
後輩?
同級生?
幼馴染って可能性も十分有り得る。
「ごめん、ちょっと」
一緒に歩いていた友達に手を合わせて見せて、ハナは夕海に向かって走った。
「えっ、ハナちゃん!?どうしたのー!?」
「ごめーん!また今度ねー!」
クラスメイト達とカラオケに行く約束だった。
あんまり参加しないから、ハナが今日は行くって言ったらみんなすごく喜んでくれたのに。
やっぱり夕海と天秤にかけられたら、ハナの答えは即答だった。
他の物と比べて夕海を選ばないことなんて絶対に無い。
会いたかった。
すごく、会いたかったんだもん。