スキナダケ
「夕海!待って…夕海っ!」

背後から夕海の手首を掴んだ。
掴まれた夕海はすごく驚いてしまって、「キャッ…」って短く声を上げてハナを振り返った。

夕海の隣を歩いてた男子も一緒にハナを見上げてる。
ハナより十センチは身長が低くて顔も幼い。
「誰?」ってきょとんとしながら夕海に訊いた声だけがハナよりも低くて違和感を覚えた。

「ハナちゃん!?ちょっとどーしたの、びっくりしたじゃん」

「びっくりしたのはこっち。夕海こそなんでここに?家、遠いじゃん」

「あー、うん。ちょっと待ち合わせしててね」

そう言いながら、夕海は横の男子を見た。
ハナより小さい男子よりも、もうちょっとだけ小さい夕海。
バランス的にはこの男子とのほうがいいように見える。

男子はハナの学校の近くの高校の制服を着てた。
割りと有名な進学校だったと思う。

待ち合わせって、この男子の家の近くで?
なんで?

「ハナちゃん、また身長伸びたんじゃない?声も…落ち着いたんだね」

「あー…うん。あれからね」

「もう十一月だもんね。寒くなったねー」

制服姿の夕海はブレザーを羽織ってる。
初めて見る、制服を着てる夕海。
夏休みはずっと私服だったから、夏服とは比較しようがなかった。
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