スキナダケ
コイツと夕海が映画を観ることなんてどうでもいい。
間に合おうが遅れようが本当にどうでもいい。

ハナは夕海に飼われてるはずだ。
夕海に好きにされていいのはハナだけ。
ハナの特権。

それを解消した覚えなんて無い。
夏休みの、夕海とバイバイした日。

ハナがちゃんと従順なら、いい子にしてるなら、夕海だけになれるなら、夕海はハナを選んでくれるって、捨てたりしないって約束したはずだ。
親戚なんて陳腐な物じゃない。

この神聖な契約はハナと夕海だけの物なのに。

だからハナは、ママも殺したんだよ…?

なのに…!

「待ってよ夕海。全然分かんないよ。この人は誰なの」

「え?」

「え、じゃなくて、誰なのって聞いてんの!」

「ちょっと…どうしたのハナちゃん…怖いよ…」

「…ちゃんと教えてよ」

夕海は困惑したように男子とハナを交互に見て、男子の手を取って、言った。

ハナにも触れてくれてないのに。
指一本も。

夕海に触れていいのはハナだけだったはずなのに。

「彼氏だよ。そういうことだから、ほんとにもう行くね?またね」
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