スキナダケ
「ハナのだよ。ハナのだったんだよ。ハナがいい子にしてれば夕海はハナのところに戻ってくる約束だった!それをお前が邪魔したんだ!!!」

「じゃあ…それは…夕海にとって君より僕のほうが魅力的だったってことだろ…」

「そんなわけねぇだろ」

彼氏の首元を持って、壁に頭から打ち付けた。
さっきの傷が痛むのか、低く、くぐもった声を上げた。

「知ってる?夕海ってね、中性的な男が好きなんだ。ね、夕海?」

夕海はハナを見たけれど、何も言わなかった。
苦しそうな顔で見つめるだけで、でも彼氏のほうはわざと見ようともしなかった。

「夕海はさ、ハナのことが大好きだったんだ。こんなに綺麗な顔で、中学から高校に入ってすぐの頃はまだそんなに体も大きくなくて、華奢なほうだった。声変わりだってまだしてなくてさ。今もそんなには低くならなかったけど、もっと女性的で。女性のお洋服もよく似合ってた。読モもやったりしてさ。そんなハナのことが夕海は大好きでさ。でもね…」

彼氏の首から手を離す。
咳き込む彼氏をジーっと見ながら頬に触れたら、蛇に睨まれた蛙みたいにピタッと動きを止めた。

「ハナ、夏休みが明けてからは完全に男になっちゃったんだ」

「君は…最初から男だろ…」

「変わっちゃったんだ。もう夕海が好きでいてくれた頃の可愛いハナじゃ無い」

「ハナちゃん…私はハナちゃんがどんなだってちゃんと…」

「嘘だよ!!!」
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