スキナダケ
彼氏も夕海もハナを見たまま何も言えずにいる。
同情だとしたらハナはなんて滑稽なんだろう。

「だからさ、夕海。ハナはハナらしく、ハナのやり方で夕海の為に作品を作ってあげる」

「さく…?」

頬、首筋、肩、胸板、へそ。
ゆっくりゆっくり、彼氏の体中を下へ下へとハナの指先が滑る。

ジッと耐える彼氏の表情にハナは何も感じない。
恐怖でも悦でも嫌悪でも、もうどうだっていい。

辿り着いた。男性器。
グッと掴んで、ニッと笑ったら彼氏は目を背けた。

夕海は口元を手の平で覆って硬直してる。

「ハッ…ハハ…アハハハハハハハハハハハハ!!!!!!切っちゃおっか!ココ、切っちゃおうかァ!?アハハハハハハハハハハハハ…アハハハハ…!!!」

「ハナくん何をッ…!」

「夕海の為だよ」

「私の…何言って…!」

「夕海は中性的で可愛い男の子が好きだもんね?夕海の為にハナが夕海だけの男の子作ってあげる!」

彼氏がハナの手首を掴んでどうにか自分の性器から離そうともがく。
額には沢山汗が滲んでいて今までで一番逼迫した雰囲気を感じて、ハナは満足だった。

コレだよコレ。
もっと。もっともっともっと、ハナにしか出来ないやり方でお前達の記憶に刻んでやる。

一生忘れられないように。

呪いみたいに。

お前達を絶対に許さない。

ナイフを強く握り直す。
カチャッて冷えた音。

言葉にならない音で叫ぶ彼氏。

「やめてお願いやめてハナちゃんお願いお願いしますヤメテ!!!」

振り上げたナイフ。
ハナの耳には彼氏の叫びも夕海の懇願も届かない。

「アアアアァァァアアアァァアア!!!!!!!!!!ハナくんヤメッ………!!!!!!!」
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