スキナダケ
「おーおーおー、お前また…ヤッたなぁ…」

部屋に上がってきたお父さんは夕海と彼氏を見て溜め息をついた。

夕海の前にしゃがんで、手を取る。
さっきよりも深く息を吐いて、お父さんはハナを見た。

「あのなぁ、一応一人娘だぞ?父親の気持ちも考えろよ」

「パパ…知ってたの…?」

「悪いな」

夕海の頭を軽くぽんぽんってやって、お父さんは立ち上がった。

一人娘だなんだと言っても、その程度で済んでしまうことが恐ろしい。
お父さんにとっての優先順位が、完全に血の繋がった一人娘より、血の繋がらないハナであることに、ちょっとだけ悦を感じた。

夕海がもっと孤独を感じていればよかったのに。
誰にも必要とされないって。
誰の一番にもなれないって。
ハナみたいに絶望を知っていれば、夕海はハナにちゃんと依存出来たのに。

「コイツか?」

言いながら、お父さんは彼氏の太ももに刺さったままのナイフを握って、軽く手前に引いた。

「ッガ…ァアアアアアアッ…!!!」

「パパ…!」

「おーっと。悪いな」

「お父さん、それは悪いよ」

笑いながら言うハナに、お父さんはお前が言うなって言いながら立ち上がった。
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