スキナダケ
「夕海…見て…」

焼却炉のほうへ歩いていって、蓋を開けた。
圧迫していた空気が蓋を開けることで軽くなって、煤が少し風に舞った。

「ここでママを焼いたんだ」

「焼い…た…?」

「そう。焼いた。そのままの意味だよ」

夕海も焼却炉に近付いてきて、中を覗いた。

焼却炉はあの日のまま。
中にはまだ焼け残った骨が残っている。

「ほんとに…本物なの…?」

「そうだよ。夕海はさ、ハナがママの所有物であることを責めたよね。だからママさえ居なければハナは本当に夕海だけの物になれるって思ったんだ。そうすれば夕海はまた会いに来てくれるって言ったじゃん。だから頑張ったのに、夕海はハナを裏切った」

「私、殺してなんてお願いしてないじゃない…。ハナちゃんが勝手にヤッたのに私のせいにするの!?」

「夕海のせいになんてしてないよ。ハナがそうしたいと思ったから、しなきゃいけないと思ったからヤッたんだ。そうでもしなきゃハナは一生ママの所有物だった。孤独なまま、嫌いな自分のまま。夕海にまで捨てられたらハナは生きていけない。だからそうしたのに、夕海が嘘をついたことは事実でしょ?ハナよりこんな男のことを選んだんだ。やっぱりハナのこと、汚いって思ってた?」

「そんなこと思ってない…。ただ私は普通の恋愛だってしたい、普通の女子高生なんだよ。ハナちゃんのことが嫌いだなんて言ってないじゃない。なのにここまでするなんて…やっぱりおかしいよ…」
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