スキナダケ
「無駄だよ」

「ハッ…ハナ………ッ…か…ぐら…くん…ッ」

それだけで苦しいはずなのに、彼氏は何かを言おうとする。
この期に及んで命乞いだろうか。
みっともない。

「かぐらっ…くん…」

名前を呼ばれても、もうハナの感情は動かなかった。

「かぐらっ…くんお願い…だ…夕海のこッ…とは…ゆる………して…ッ」

「考えとく」

「おね…が…」


「じゃあもう飽きたからおしまいね。じゃーね」

「かぐ…」

「もう生まれ変わんないでね」

トンッて彼氏の体を押したら、簡単にリフトから地面に向かって落ちた。

電車のホームで初めて人を殺した時のことを思い出した。

ふわっと一瞬スローモーションみたいに宙に浮いて、一気に落下する。

今度は電車じゃ無い。
ハナが、殺してるんだ。

ゆっくりとリフトを下ろしていく。

木の中間くらいで、木から吊られた彼氏がぶらぶら揺れている。

相変わらずロープを引っ掻きながら、口からは泡がいっぱい出ていた。
よくは見えなかったけど、白眼をむいていて、首吊りってこんな感じなんだって思った。
< 211 / 235 >

この作品をシェア

pagetop