スキナダケ
リフトから降りて、全体が見えるように後ろに下がって見上げた。

しばらくバタバタともがいていた彼氏も次第に動かなくなって、最後は腕をぶらん、と落としてから、息絶えた。

本当に息絶えたのか、まだ意識があるのかどうかはハナには分からない。

ただ、首吊りって即死出来ないこととか、
この後に尿とか全部出ちゃうんだろうなってこととか考えたら、ハナはやっぱり眠るように、綺麗な状態で死にたいなんて思ってしまった。

夕海は地面に顔が付いちゃうくらい突っ伏して嗚咽をあげている。

木から離れてはいるけれど、その光景ははっきりと見えているだろう。

お父さんは美術館で絵画でも見るような、落ち着いた表情で、ただぶら下がる彼氏を眺めていた。
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