スキナダケ
「夕海、ごめんね」

再度男性から鞄を受け取って、手錠を取り出した。
片方の輪っかを夕海の手首に、もう片方をハナの手首にかけた。

これで夕海とハナは繋がった。
夕海にハナを引きずって逃げるほどの力は無い。
やっとハナ達は一つになれたんだ。

「ハナちゃん…どうするの…?」

「こっちに来て。無理に引っ張って逃げようとしないでね。手首痛めちゃうから」

夕海は黙ってハナに従ってくれた。

焼却炉まで二人で歩いて、蓋を開けて前に立つ。
お父さんは相変わらずただの見物客みたいな顔で、ジッと傍に居るだけだった。

男性二人が焼却炉の両サイドに立って、一人が「本当に実行するんですか」ってハナに訊いた。

ハナは何も答えなかったけれど、そこでようやくお父さんが口を開いた。

たった一言。
「やらせてやれ」って。

これで最後になるのに、お父さんは夕海に何も言わなかった。
一人娘を今から殺そうとしているハナにも。

夕海もお父さんのことは見なかった。
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