スキナダケ
「私…死ぬの…?」

「死なないと思ってた?」

「だって痛いことしないって」

「痛い殺し方はしないって言ったんだよ」

手錠がかかったほうの手で、ハナの手錠がかかったほうの手に夕海が触れる。

夕海から触れてくれることはすごく久しぶりで、未来永劫、二度と無い。
涙が出そうだった。
ずっとこのままで居られたらいいのに。

「一緒に生きていく選択肢は…もう無い…?」

「無いよ」

「どうして?」

「ここで元に戻っても、夕海とはきっと何度もお別れをする。また新しい恋人ができたり、今はちょっと距離を置きたいな、とか。そんなのは耐えられない。こんな思いは二度としたくないんだ」

「こんな思い、もうさせないよ。信じられない?」

「うん。ごめん」

夕海は小さく溜め息をついて、ハナの手を静かに離した。

これが完全にお別れの合図だった。
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