スキナダケ
ゴンッ…ゴンッ…

拳も足も使って繰り返したら、ガコッて鈍い大きな音がして、すごくゆっくり蓋が開いた。

さっき、…って言っても、もう何時間前か分からないけれど、最初に焼却炉の中を覗いた時よりも中の煤が舞って身体中に落ちてくる。

咳き込みながら、突然視界に光が射してきたことで、目が痛かった。

外はすっかり夜で暗いのに、焼却炉の中がよっぽど暗闇ってことなんだろう。

夜の景色が明るく感じるなんて不思議だ。

「もーっ遅いよ!ちゃんと傍に居てって言ったじゃん!」

「あぁ、わりぃな。夕海。」

「ほんっと…遅いよ。今何時?」

「九時」

ハナちゃんのおうちに着いたのが正午。
それから多分、家を出たのが…確か車のデジタル時計が二時くらいだったと思う。

焼却炉に入った時は…何時だったんだろう。

「何時間くらい経ってる?」

「五時間くらいだな」

「そう…」

左腕が未だにズクズク痛む。
そんなに深くは刺してないし、切ったくらいだ。

「とりあえずちょっと、ここから出してよ」

パパが大声で人を呼んだら、さっきの男の人達が走って来てくれた。

一人が焼却炉の中に入って、持っていた鍵で手錠を外す。

男の人が先に出て、私が這いずるようにして蓋の前まで行って、私を抱えるようにして焼却炉から出してくれた。

地面に足がついて、そしたら自分で思ってたよりもさすがに怖かったのか、ヘナヘナと腰が抜けた。
倒れ込む私をパパが支えてくれた。

焼却炉の中で眠ってるみたいなハナちゃんは、死んだ。

多分、本当に死んだ。

私が殺した。
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