スキナダケ
ううん。違う。

それでもきっと、私は辞めなかった。

この素晴らしい人間が私だけを求めてる。
殺したいほど、私を愛してる。

この先ずっと生きていたら、いずれハナちゃんの気持ちは変わっちゃうかも。
ハナちゃんのほうから私を捨てちゃうかも。

そんなの絶対に嫌だ。

ハナちゃんが私に興味を無くすことも、
この先もしかしたら「普通」の人間になっちゃうかもしれないことも。

だったら全部本当に、物理的に自分の物にしちゃえばいいんだ。

毒薬と首吊りってことは分かったけれど、その計画だけをシンプルに実行するとは思えない。

パパにも、「お前がひどく怪我することも考えとけよ」って言われたから覚悟はしてた。

それくらいは平気だった。
だってハナちゃんは絶対に私を一人で死なせたりはしない。
きっと致命傷ほどの傷は負わせない。

焼却炉ルートまでは私はちゃんと生きてる自信があった。

残念だけど彼氏のことは助けてあげられない。
私が彼氏の為に命乞いすればするほどハナちゃんの殺意に着火するだろう。
狂った殺人鬼は止められない。

だから私は自分の為だけに計画を練った。
人生で初めての殺人の為に。
素晴らしい君の為に。
< 230 / 235 >

この作品をシェア

pagetop