スキナダケ
ハナちゃんは毒薬をミネラルウォーターに溶かした物を使う。

その毒薬は私と彼氏がハナちゃんのおうちに行く前日に、パパに引き渡された。

どのペットボトルを使うのかを事前に聞いて、睡眠薬を出来るだけ細かく擦り潰して溶かしたミネラルウォーターに、ハナちゃんが貼ったラベルを張り替えて、パパに渡した。

ハナちゃんのお手製毒薬ウォーターは、睡眠導入剤になった。

睡眠薬はもちろん、パパに譲ってもらった。
銃や毒を流すんだから、睡眠薬くらい軽い。

用量には苦労した。
ネットで何件も記事を漁って、致死量にならない量と、しっかり効くことを薬の種類から何度も調べて作った。

本当はハナちゃんにだけ飲ませたかったんだけど、どっちのペットボトルを選ぶか分からないから、両方に混ぜるしかなかった。

だから必然と、私はポケットの中にカッターナイフを隠してた。
途中でバレたらどうしようって思ったけれど、無事、私のポケットの中のカッターは守られた。

それは私が絶対に眠ってしまわない為の対策だった。

ハナちゃんより先に落ちてしまったらそこでおしまい。

焼却炉の中でまた二人で目覚めて、ハナちゃんの計画も私の計画も失敗する。

薬がすり替えられてることを知ったら、今度こそその場で私を殺すだろう。

それだけは絶対にダメ。

ハナちゃんは私の左手と自分の右手に手錠をかけた。
左手の指先はもうほとんど感覚が無かった。

だけど手錠をかけられたのが左手なのは助かった。

私は、遠のく意識の中で、ハナちゃんがだんだん落ちていくのをどうにか確認しながら、右手でポケットのカッターナイフを掴んで、自分の左腕を切った。

痛みが広がる。
意識が覚醒する。

それでも、それも一瞬。
薬の威力は私を襲う。

もう片方のポケットをまさぐった。
逆手になるから難しくて気が焦ったけれど、何とか掴めた。

細い注射器。
こっちが本当の毒薬入り。
パパと交換したハナちゃんお手製の毒ウォーターを移した物。
「ママ」ってラベルが貼っていたほうを注入した。
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