スキナダケ
人にも自分にも注射を打った経験なんてもちろん無い。

針を刺した瞬間に痛みでハナちゃんが目覚めてしまったら即ゲームオーバー。

でも、そんなことを気にしている余裕なんて私自身に無かった。

この計画を決めた時、絶対に途中でやめたりしない、後悔なんてしないって心に強く決めたんだから。

それに今ハナちゃんが毒を飲んでいない以上、私が途中でやめようがハナちゃんが目覚めようが、私がここで殺されることは変わらない。

だったらヤルしか無い。
それしか選択肢は無い。

意識はだいぶ朦朧としている。
視界もほとんど見えてない。

もう無我夢中で手錠をかけてるほうの手の平で、なんとか届くハナちゃんの手首を掴んで思い切り注射針を刺して、毒薬を注入した。

ハナちゃんが手錠をかけたのが左手で本当に良かった。

もし右手にかけられてたら、左手はほとんど感覚が無かったし、自分が意識を飛ばさないようにカッターで切る腕も右腕になっちゃって、
目覚めた時に私の腕は両方とも麻痺しちゃってたかもしれないから。
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