スキナダケ
「ねぇ、パパ」

「あぁ?」

「焼却炉の蓋って閉める必要ってあった?焼く予定なんて無かったし、起きた時私ちょー怖かったんだから」

「わりぃな。でも雰囲気出てただろ?」

「求めて無いから」

焼却炉の中は暗くてよく見えない。
手伝ってくれた男の人が持ってる懐中電灯を借りて中を照らした。

焼却炉の鉄壁にもたれるようにして、ハナちゃんが息絶えている。

綺麗な顔。

口の端から細く流れた血液が固まっている。

でも、ハナちゃんに観せられた生徒たちの映像よりも、やっぱりハナちゃんは綺麗なままだった。

「ハナちゃん。………ハナちゃん」

「死んでるよ」

「分かってるよ」

「いいんだな?これで」

「私が望んだんだよ。私がヤッたの。ハナちゃんの命は私だけの物になった。私だけを愛したままで…」

「狂ってんな」

「ハナちゃんが私をそうさせたんだよ。ねぇ、パパ?パパもそうでしょ?ハナちゃんに狂わせられたよね」

「…知らねーよ」

もう一人の男の人が持ってる懐中電灯で照らされた私は、自分で思ってたよりも煤だらけで汚かった。

左腕も左手も血だらけで、もう全然、普通なんかじゃない。
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