スキナダケ
「お前、最近ハシャぎすぎじゃないか?」

高校に入ってしばらくした頃、珍しく早い時間に家に居たお父さんにリビングで言われた。
夜の八時くらいだった。
お父さんは美味しそうにビールを呑んでいた。

ハナは出掛けていて帰ってきたばっかりで、ピアスを外したり、軽くやっていたメイクをシートで拭き取ったりしていた。

この日は人は殺していなかった。
高校の「友達」と遊んできただけだった。

高校では友達が出来た。
制服を着なくなってからハナは、ようやく周りに認められた。

これがハナちゃんだって。
その代わり、ハナちゃんに無い個性も自分は持っているって、みんなが自分を尊重して、ハナを尊重してくれる。

すごく、息がしやすくなった。

ハナを生きていくのはハナだけなんだから、生きたいように生きていいんだ。
「何になりたい」とかじゃない。
この瞬間、生きたいように生きればいい。

それでいいんだって思えた。
生にも死にも執着出来ないのに。
ハナの生きてきた歴史集を捨てられないのに。

矛盾していた。

本当は寂しいのか、自分が何者なのか分からなくて怖いのか、
周りの同年代の人達みたいに振る舞えない自分が異常なのか。

異常だってことは、間違っていないけれど。

何人もの未成年者が殺されて自殺として処理されて、突然若い自殺者が多発しても、世間は然程騒ぎ立てない。

大きな世界では気にも留められない命達と、ハナもきっと同じだった。
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