スキナダケ
「あのさ、ゆうみ、って」

「あぁ、夕方の夕に、海」

「夕方の海」

「そう。寂しい感じでしょ」

夕海がニッと笑った。

「でも綺麗だよ」

「ありがとう。えぇっと」

「かぐら」

「そう、かぐらくん。字は?」

「中華の華に楽しいで、かぐら。ハナでいいよ。みんなそう呼んでる」

「ハナ、くん?」

「ハナちゃんって呼ばれることのほうが多いけど。どっちでも」

「そうよね、そんな感じ。じゃあハナちゃん」

夕海がハナの名前を呼んで、今までで一番、にっこり笑った。

なんでかは分からない。
心臓の奥のほうがドクンって鳴った。
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