スキナダケ
クローゼットの端に異質な存在みたいに、ハナの中学の時の制服と、某私立女子中学校の制服が並んで掛けられている。

ハナが殺した、ある女の子に貰った。
中学の卒業式間近だった。
同じ、中三の女の子だった。

もう着ないから記念にって彼女は言った。
死んだあとに制服が無くなってたら変だよって言ったけれど、女の子は「どうとでもなるよ」って言った。
実際、どうとでもなった。

遺族はきっと、彼女が自ら捨てたんだろうって思ったのかもしれない。

貰ってもハナにはどうしようも無いんだけど、何故か捨てることも出来ずに今もこのクローゼットの中に潜んでいる。

夕海はその二着の制服を取ってハナに突き出した。

「これ着て欲しい」

「ん…え?」

「着替えてよ」

「どっちに?」

「どっちも」

「どっちも?」

夕海はハナの制服と女子中学の制服を同時に着ろって言っている。
上にハナの制服、下に女子の制服。

ハナの中学はブレザーだったけど、女子私立中学はセーラー服だった。
唯一、色が濃紺なことが同じってだけ。

でもハナは夕海の言う通りにした。
何故か逆らえなかった。

「わかった」

着替える為に部屋を出ようとしたら夕海に止められた。

「ここで着替えて」

「…ここで」

「うん」

「…わかった」
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