スキナダケ
こうしてハナは、夕海に飼われることになった。

ちっとも窮屈には感じなかった。
一ヶ月間、同じ家で過ごして心を預け合って、慰め合った。

ママも何度か帰ってきたけれど挨拶を交わす程度で夕海とはあまり口をきかなかった。
顔を合わせるたびに、ママはハナにキスをした。

私のアートは今日も最高だって。
愛してるって言葉をハナに浴びせては称賛した。

ママがハナを愛してることは事実だ。
自己顕示欲として。
ハナのこの容姿も全部、自分の偉業だと思っている。

そうかもしれない。
人間は遺伝子に逆らえない。

少し前まではママの「愛してる」が苦しかった。
でも今は違う。

「ありがとう。ハナも愛してる」って言って、心で夕海を想う。
夕海に支配されたハナの心は、それで救われていた。

寂しくなかった。
何にもなれなくても怖くなかった。

でも、それでも殺人は辞められなかった。
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