スキナダケ
「…夕海?」

「行くの?ハナちゃんの飼い主は私なのに?」

「友達だよ。ちょっと会ってくるだけ。心は…」

「私の物?」

「うん」

夕海の手の平がハナの頬に触れる。
もう一回、キスしようとしたハナを夕海はよけた。

「目、とろんってしてる」

夕海のくちびるは、鼻先にだけ触れて、ハナのくちびるにはしてくれなかった。

まだ半月くらいしか一緒に暮らしてないのに、ハナはすっかり夕海に従順だった。

今までは自分の容姿だけで他人を好きに出来た。
中学の時は奇妙がられてそもそも周りに人が居なかったけれど、
高校生になってからはなんでもハナの思い通りだった。

夕海だけがハナの心を掴んで離さない。

夕海が人より特別に何かを持ってるってわけじゃない。
容姿だって中の上ってくらい。

なのに、夕海の目、言葉の一つ一つが少しずつハナを支配していった。
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