スキナダケ
冷蔵庫が無いって思ったら、シンクの下の調理器具を仕舞える戸棚の横に、普通の冷蔵庫の野菜室くらいの大きさの箱があった。

「これ、冷蔵庫?」

「そうだよ」

「冷凍庫は?」

「無いよ、そんな物」

当たり前でしょって言いたげにお姉さんは笑った。

最初からマンションの備え付けらしい冷蔵庫の扉を開けたら、庫内の上に巨大な氷が出来ている。

物を入れるスペースが氷のせいで随分狭くなっている。

「これ、どうしたの」

「え?あー、温度が下がりすぎるのか、放ってたらすぐそうなっちゃうの。時々お湯をかけながら溶かしてさ。もう大変」

「温度上げればいいのに」

「今度は上げ過ぎて食材が傷んだら怖いじゃない」

お姉さんはそう言ったけれど、氷は下にもこちら側にも成長してきてるし、もうすぐで扉すら閉まらなくなりそうだった。

食材が傷むも何も、そもそも冷蔵庫には麦茶のボトルくらいしか入っていない。
そりゃそうだ。
これだけ氷が巨大化していたら、食材すら入れられない。

冷蔵庫っていうより、これが冷凍庫じゃんって思ったけど、言わなかった。
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