再び、光が差す-again-〈下〉
【幸人side】


部屋から出ると、カオルが一階で顔を隠して座り込んでいた。

指一つ動かないカオルに死んでいるのかと心配になる。

俺が階段を下りると、その足音にゆっくりと顔を上げる。


「…お前が冷静じゃないのは珍しいな」


自分も冷静さを欠いて普段なら絶対にしない、聡さんに掴みかかるという自殺行為をしてしまった。

いつも冷静で身体が動くよりも先に頭で考えるタイプな筈なのに。


「恋愛ごっこはもうやめたのか?」


カオルの言葉に乾いた笑みをこぼす。


「同じことをせっきにも言われたよ」

「みんな思ってたわ、好きでもねぇ奴と付き合って馬鹿かよって」

「…確かに馬鹿だった」


菜穂に、気持ちに答えられないのに繋ぎ止めることに卑怯だと思わないのかと問われた時、何も言えなかった。

それは図星だったからだ。
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