再び、光が差す-again-〈下〉
菜穂といる時間は楽しくて、気持ちが穏やかになる。

気付いたら目で追っていて、気付いたら触れそうになる。

でも、今は桜と付き合っている。

一度別れを告げ、その悲しみで自殺未遂をした時、桜が自分に向ける愛情がどれだけ歪でどれだけ深いものか気付いた。

また自殺未遂をして、今度は未遂じゃ終わらなかったらどうしようと考えた時、握られた手を振り払うことが出来なかった。

でも、もう無理だ。

菜穂が突然消えたと聞いた時、頭が真っ白になった。

杏樹さんに連れ去らわれたと知った時、自分でも驚くほど誰かにこんなにも殺意が湧いたのは初めてだった。

確かに、雪希やカオルの言う通り自分は恋愛ごっこをしているのだと今更気付く。

菜穂に会いたくて、触れたくてしょうがない。


「菜穂に会いたい」


切実な思いを口にすると、カオルが笑った。

会って謝りたい、そしてこのどうしようも無い気持ちを告げたい。
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