再び、光が差す-again-〈下〉
「色んなものを捨てて手に入れたものって、捨てた以上に満たされるものなの?」


そんなことをして幸人を繋ぎとめても、捨てた分はもう二度と返ってこない。

ずっと喪失感だけが残り、満たされたいとまた幸人を縛り付ける。

その度に自分の首も絞めていることにどうして気付かないのだろう。


「幸人を失う絶望を想像したら、簡単に離すわけにはいかない」


未来のことを考えて、今の現状から抜け出せない桜はやっぱり杏樹が言う通り可哀想な子だった。


「…あなたは繊細なのね」

「…は?」


繊細と言われたことが無いのか、桜は怪訝な顔をする。
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