再び、光が差す-again-〈下〉
「いいから早く乗れ」


カオルは私に渡したヘルメットを奪い取ると、乱暴に被せてくる。

人の恋路に全く興味の無いカオルは、話すのが面倒になったのかあからさまに面倒臭そうな顔をしてくる。

私は教えてくれない腹いせにカオルの腹を殴って渋々バイクに乗る。


「暴力化してくるなぁ」


カオルは腹を擦りながら、痛がる素振りも見せずむしろ楽しそうに笑った。

正直のところ、幸人が好きなのは菜穂だと私は思っていた。

いつも菜穂の勉強を見ていたし、基本的女の子全般に優しい幸人だが、菜穂にはそれ以上に優しくしている気がした。

だから、二年も付き合っている彼女がいることに純粋に驚いてしまった。

それと同時に思った。

彼女がいる男の人を好きになる菜穂はとても辛いだろうし、なのに優しくされるのは酷だなと。

そんなの諦めようにも簡単には諦められない。

菜穂は必死で顔に出ないようにいつも笑って気持ちを誤魔化していたのかと思うと、自分のことのように胸が締め付けられた。
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