再び、光が差す-again-〈下〉
私は初めて聞いたAgainが再び現れた理由に涙が出そうになる。


「俺が一番大事なのは、復讐よりもミナトの言葉だけだ」


聡さんの言葉が杏樹の心にスッと染み込むように、杏樹の頬には気付くと涙が伝っていた。

どうして杏樹が泣いているのか、私には分からなかった。

きっと今ここにいる二人にしか分からないのだと思った。


「もういい加減戻って来い」


聡さんが杏樹に手を差し出す。

杏樹はその手をじっと見つめるだけで、決して握り返すことはしなかった。

でも、ミナトという人を殺した男を殺す気持ちは少しだけ薄れているように見えた。
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