再び、光が差す-again-〈下〉
「……なに」

「別に」


カオルは欧米の挨拶のようにキスを落として、驚いている私を置いてけぼりにし、自分は淡々と携帯を触り始めた。

最近のカオルはおかしい。

というより、私が誤って口を滑らしたあの日からずっとおかしい。


「何時帰んの?」

「…えっと、もうそろそろ帰ろうかな」

「ん、送ってく」


カオルが家まで送ってくれるのはいつも通りのことだ。

だが、いつもなら私を置いてスタスタと溜まり場を出て、私がカオルを追いかけるのが一連の流れだった。

なのに、


「はい」


カオルは私に手を差し出す。

これだ、これ!この手だ!

少しの距離を歩くだけなのに、手を繋ごうとしてくる。
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