再び、光が差す-again-〈下〉
「カオルくんの彼女さんよね、雪希からよく聞いているわ」


雪希って母親に今日の出来事を報告するような息子なんだと、想像したら可笑しくって顔が緩む。

優しくて仲間思いな雪希は家族もちゃんと大切にする人だった。


「二人ともお見舞いありがとうね、気を付けて帰ってね」


紀子さんは笑って言うと、どこかおぼつかない足取りで私達の横を通り過ぎる。


「あの」


疲れきったような後ろ姿に、私は気付けば声を掛けていた。


「私達飲み物を買いに行こうと思ってただけなので、もう少し居てもいいですか?」

「でも、もう暗くなってきてるし、親御さんも心配するんじゃ…」

「私も!もう少しここに居たいです」


私と菜穂が口々に揃え、雪希の側にいたいと告げると、紀子さんは嬉しそうに微笑んだ。

雪希の笑っている顔にそっくりな優しそうな笑顔に、私は張り詰めていた緊張が少し解けるような気がした。
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