再び、光が差す-again-〈下〉
「そうだね」


菜穂は私の言葉に同じ気持ちだと応えるように手をギュッと握った。


「ねぇ、今度ダブルデートしようよ」


私の手を握って安心したのか、菜穂は楽しそうにもう違う話題へと移る。


「嫌」

「え〜!なんでよ!」

「幸人に嫉妬しそうだから、絶対に嫌」

「なにそれ!可愛い!」


そんな他愛のない話で盛り上がっていると、あっという間に溜まり場に着いた。

カオル達のバイクもあり、中にいるのだと確認出来る。

私と菜穂は運転手にお礼を言うと、意を決して溜まり場に足を踏み入れる。

溜まり場は相変わらず騒がしく、いつも通りの日常が繰り返されていた。

私は部屋のドアをノックしてから、ゆっくりと開けた。


「…あっ」


扉を開けて一番最初に視界に入ったのは、この場では異質な存在を放っている杏樹だった。

私の声に、菜穂も中を覗いて杏樹がいることを確認する。
< 204 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop