再び、光が差す-again-〈下〉
「これどうぞ、雪希の好きなジュースなの」


紀子さんはそう言ってビニール袋から、パックの野菜ジュースを渡す。


「これよく飲んでる」

「野菜は嫌いなのに、ジュースにしたら飲むのよ。小さい時からおかしな子だったわ」


紀子さんは小さい頃の雪希の出来事を思い出したのか、懐かしむような表情で笑みを零す。


「雪希は昔から人懐っこい性格だったんですか?」


私は気になったことを聞いてみると、紀子さんと菜穂は顔を見合せて笑った。


「ほんの数年前までは凶暴すぎて手が付けられなかったんだから」

「え?凶暴?雪希が?」


人懐っこくて誰とでもすぐに仲良くなれる雪希からは想像もつかない言葉だった。


「実はね、私バツイチなのよ」

「え?」

「雪希が中学生の頃元夫と別れたんだけど、その反動でグレちゃったのよ。
かなり遅いイヤイヤ期みたいな?」


もう昔のことだからなのか、おかしな例えをしてくる紀子さんは思ったよりも楽観的な考え方をする人だと瞬時に悟る。
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