再び、光が差す-again-〈下〉
そろそろ面会の時間も終わる頃、私と菜穂は名残惜しいが渋々病室を出て行こうと立ち上がる。


「綺月ちゃん」

「はい」

「本当はあの時帰るつもりだったのよね?
でも、もう少しだけ居たいって言ってくれてありがとうね。菜穂ちゃんもありがとう」


紀子さんは、私と菜穂の手を取るとギュッと力一杯握る。


「本当は一人でいると嫌なことばかり頭に過って怖かったのよ。
だから嬉しかったわ、本当にありがとう」


雪希が良い人なのは、お母さんが良い人だからだと改めて感じる。


「雪希が話していた通りの子だわ」

「…え?」

「優しい子」


みんなに出会ってから、よく"綺月は優しい"と言われることが増えた。

ずっと自分は優しくない薄情な人間だと思っていたのに、他人からはそうは見えてはいなかった。

それが嬉しくて、涙が出そうになる。


「あの女の子にだらしの無いカオルくんを惚れさせた綺月ちゃんがどんな子かずっと気になってたのよ、でもとっても良い子で安心したわ。
今度はカオルくんとの馴れ初め聞かせてね」


そう言ってお茶目に笑う紀子さんに自然と笑みが零れた。

堅苦しい私の母とは正反対な温厚な紀子さんを見て、人はこうも違うのかと感心してしまった。

病院の帰り道、菜穂はずっと私の袖をキュッと握って歩いた。

早く目を覚まして、いつもみたいにくだらない話をしたいと願う菜穂の気持ちが私にも聞こえてくるようだった。
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