再び、光が差す-again-〈下〉
「…ただいま、綺月」


まるで耳元で囁かれているかのように、くすぐったかった。


「お兄その顔キモーイ、デレデレしてるー!」

「おい兄貴になんてこと言うんだよ」

「はい、携帯返してよ」

「待てよ、まだもうちょい貸してくれよ」

「何でよ!自分の携帯で電話しなよ!」


兄妹喧嘩をしている今の光景が目に浮かび、私は思わず笑いが出る。


「綺月、あんま頑張りすぎんなよ」

「分かってる」

「じゃあ奈都がうるせぇから切るな」

「うん、おやすみ」

「…おやすみ」


カオルはとびっきりの甘い声で言うと、電話が切られる。

最後のおやすみはズルいでしょ…

火照った顔を手で扇ぎ微かな風で鎮まらせようとする。


「よし、頑張ろう」


カオルの声を聞いて、単純な私は俄然やる気が出て机に向かった。
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