再び、光が差す-again-〈下〉
「雪希のお母さんも元気そうだったよ、今日沢山話したの」


いつもなら相槌程度の返事はしてくれるのに、今のカオルは何も言わない。


「カオル」


私は長身のカオルに合わせるように背伸びをして、なるべく大きく包み込めるように手を目一杯広げて抱き締める。


「大丈夫、雪希は消えたりしないから」


大丈夫だよ、大丈夫、カオル。


「だから、そんな顔しないで」


背中を優しく摩ると、カオルはそれに応えるように私を抱き締め返す。

"大丈夫"なんて何の根拠も無いけど、それでも言い続ければ大丈夫になる気がした。


「何も言わなくていいから、カオルは今雪希のことだけを考えて」

「……うん」

「怖くなったら私のとこにおいで、ギュッてしてあげるから」

「………怖くなんかねぇよ」

「ふふっ、強がりだね」


久しぶりにあったカオルは、いつもの強引さは無くなっていた。

以前よりも随分弱い部分をさらけ出してくれるようになって嬉しいなと罰当たりなことを考えてしまう自分に気付き、すぐに頭の中から消し飛ばした。
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