再び、光が差す-again-〈下〉
「俺が今の自分と向き合ってないって言いたいのか?」

「だって、海斗はずっと誰にも見せてないじゃん」


何を?と海斗は眉をひそめ、怪訝な顔をする。


「弱い部分」


私は真っ直ぐな目でそう言った。

すると、海斗は驚いた顔を一瞬見せて、納得したような顔で背もたれに身体を預け息を吐いた。


「…これか」

「えっ?」

「少しずつ人の核心に触れていく、そのお前のテクニック」


なんだそれ、と私は呆れたように笑みを零す。


「上手いんだよ、お前」

「上手い?なにが?」

「勘も鋭くて、人のちょっとした異変にも敏感で、おまけに心の内を表情だけで読もうとする洞察力もあって、だから俺はずっとお前が苦手だったのか…」


私を置いてけぼりにして、海斗は自分の気持ちに少しだけ納得したのかだらしなく項垂れた。


「土足で踏み込んだりしねぇんだよ、お前は。
ちゃんと靴脱いでそれ揃えて、挨拶しながら入ってくんだよ」

「…どんな例えよ」

「だからみんな簡単に中に入れちゃうんだろうな」
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