再び、光が差す-again-〈下〉
何一つ変わっていないお姉ちゃん部屋は、どの家具も物も息をしていなかった。

使われなくなった目覚まし時計は、朝の五時に設定されたままで、小説の間に挟まれた栞はそのページから動いていなかった。


「問題集の量すげぇな」


綺麗に棚に整理された大量の問題集を見て、海斗がうんざりする顔で言った。

私は問題集を一冊手に取り、パラパラとページを捲る。

血がついたページがところどころあり、それは痛々しく残っていた。


「仮に、私のおかげでカオルや杏樹が変わったとしても、お姉ちゃんは戻って来ない」


パタンと問題集を閉じると、元あった場所に直す。


「…家族って、難しいね。
まぁ、長期戦覚悟で今は待つしかないよね」


私は作った笑顔を向け、なんでもないように見せかけた。

母はお姉ちゃんの話をしないし、お姉ちゃんのことも聞いてはこない。

そして、お姉ちゃんもまた母という存在を消すことで前に進もうとしていた。
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