再び、光が差す-again-〈下〉
「俺には、家族っていう単語がよく分からない」
家族のことで悩む私に向かって、海斗はあぐらをかいて床に座りながら吐く息と一緒に零す。
「…親は、ずっと俺の中で要らない存在だった」
海斗はどこか遠くを見つめながら、ポツリポツリと自分のことを話し始めた。
「好きな時間に出て行って、好きな時間に帰ってくるような親だった。何日も家を空けることもあれば、たった数時間で帰って来ることもあった。
毎日毎日馬鹿みたいに恋だの愛だのを求めて、いつかきっと幸せになれるのだと信じている馬鹿な母親だった」
海斗がこんなに話すところを見るのは初めてだった。
本当に自分の気持ちと向き合いたいのだと、改めて感じる。
「申し訳程度に置かれたチンご飯をあっためて、冷めたら食うような生活だった」
わざわざ温めたご飯を冷ますあの時間が、自分にとってはとてつもなく無心でいられたと口にする。
頭を真っ白にして、もくもくと湯気を立たせるご飯がどんどん冷めていくのを見ていると、自分の怒りや憎しみや虚しさで高ぶった気持ちも一緒に冷ましてくれている気がしたのだと。
そして、そう話す海斗の目も徐々に冷めていくように見えた。
家族のことで悩む私に向かって、海斗はあぐらをかいて床に座りながら吐く息と一緒に零す。
「…親は、ずっと俺の中で要らない存在だった」
海斗はどこか遠くを見つめながら、ポツリポツリと自分のことを話し始めた。
「好きな時間に出て行って、好きな時間に帰ってくるような親だった。何日も家を空けることもあれば、たった数時間で帰って来ることもあった。
毎日毎日馬鹿みたいに恋だの愛だのを求めて、いつかきっと幸せになれるのだと信じている馬鹿な母親だった」
海斗がこんなに話すところを見るのは初めてだった。
本当に自分の気持ちと向き合いたいのだと、改めて感じる。
「申し訳程度に置かれたチンご飯をあっためて、冷めたら食うような生活だった」
わざわざ温めたご飯を冷ますあの時間が、自分にとってはとてつもなく無心でいられたと口にする。
頭を真っ白にして、もくもくと湯気を立たせるご飯がどんどん冷めていくのを見ていると、自分の怒りや憎しみや虚しさで高ぶった気持ちも一緒に冷ましてくれている気がしたのだと。
そして、そう話す海斗の目も徐々に冷めていくように見えた。