再び、光が差す-again-〈下〉
「だから今更どこでどんな風に暮らそうが、俺は別に興味なんて一ミリも湧かない」


Againと関わるようになって、色んな人がいることを知った。

愛されて育った人、両親を亡くした人、重たすぎる期待をされている人、親に捨てられた人。

子供に関心を持っていない親のことを話す海斗もその色んな人の枠に入っていた。


「他の奴に比べて俺の親は別に俺にとってなんの害も無かった。もちろん親も、俺を産んだからと言って何か重荷になっている様子でもなかったし。
好きなように生きて、俺自身も好きなように生きた」


その点、他の奴らはずっと苦しそうだったと他人の痛みと比べて自分はマシだと海斗は口にする。

誰かの痛みと、自分の痛みを比べること自体間違っていると私は思った。

それでも口出しせずに私は海斗の話を最後まで聞く。


「母親の期待に応えようとして、キャパオーバーで自爆した美月を見た時、誰かに縛られることはこんなにも恐ろしいものだと知らなかった」


18年間もよく耐えられたなと、どこか嘲笑うように海斗は笑ったが、でも純粋にお姉ちゃんを尊敬しているようにも見えた。


「俺だったら一年も耐えられなかったはずだ。
よかった、産んだ子供に興味がない母親で」


安堵しているはずの口ぶりなのに、海斗の表情からは虚しさを感じる。

そんな弱さを隠すように自嘲気味に吐き捨てた。


「縛られていない自分は幾分美月よりもマシだ」


他人と比べて、自由に生きてきた自分はよっぽど恵まれているのだとまた海斗は他人と比べる。

これから先も自由に生きる。自由に生きられる。

だけど、その自由が海斗から本当の自由を奪っていた。
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