再び、光が差す-again-〈下〉
「今から長めにするからちゃんと息しろよ」

「えっ、いやいやここ外だからね」

「どうせ夜遅いし誰も通らねぇよ」

「ちょっと待っ…んっ」


カオルは潔い宣言をしてから、私に長めのキスをする。

久しぶりの甘いキスに、私はカオルの服を握ってしがみつく。

何度も角度を変える度に、カオルの口から漏れる吐息が甘くて溶けてしまいそうになる。


「お前の漏れる声エロいな」


カオルは理性が飛びそうになり、慌てて唇から離れると早々に私の顔を真っ赤にさせる。


「…や、やっぱり息止める」


私は恥ずかしさですぐに隠そうと、カオルの胸に顔を埋める。


「酸欠になるからやめろ」


カオルは私で充電するかのように全身で抱き締めた。

みんな思うことは同じだった。

不安で不安で堪らなくて、毎日腹立たしくて、今にでも誰かに八つ当たりしたい、そんな気分。

早く深く息をさせて欲しい。

雪希なら大丈夫だと、絶対目を覚ますはずだと信じている。

それでも緊張状態はずっと続いて、息を吸って吐くただそれだけのことが分からなくなるくらい不安で堪らなかった。

絶対大丈夫だと今は信じるしか私も、カオルも、みんなも救われなかった。


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