再び、光が差す-again-〈下〉
不穏な雨が降る
雪希が襲われて目を覚まさないまま一週間が経とうとしていた。

医者が言うには、手術も成功しいつ意識が戻ってもおかしくはないのだが、ここまで意識が戻らないのは精神的なものかもしれないと言われた。

このまま目を覚まさないことも視野に考えた方がいいとまで言われた。


「息をしているのに、目を覚まさないって私達に会いたくないってことなのかな?」


菜穂がそう呟いた。

そうでは無いだろう、でももう綺麗事の言葉は菜穂をただ苛立たせるだけだと私は分かっていた。


「急に呼吸が止まったらどうしようとか毎日考えちゃう。それが嫌でたまらない」


唇を強く噛み、泣くのを我慢している菜穂に私は優しく寄り添う。

誰でもよくない誰かが、今意識が戻らずに眠っていることがこんなに怖いものだとは知らなかった。

失うのではないかという恐怖が、肌を刺すように痛々しく痛感させてくる。

両親を失ったカオルは私では想像できないくらいもっと辛かったはず。

だから、カオルは今誰よりも苦しいのではないかと心配になる。

雪希の意識が戻らない今、私達の一日が物凄く長く感じた。
< 30 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop